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アスベスト解体について

アスベスト(石綿)は、1970年から90年にかけて年間約30万トンという大量の石綿が輸入されており、これらのアスベスト(石綿)のうち8割以上は建築物に使用されたと言われています。1995年にアスベスト(石綿)のうち有害性の高いアモサイト(茶石綿)とクロシドライト(青石綿)の使用等が禁止となり、クリソタイル(白石綿)についても2004年10月に労働安全衛生法施行令が改正され、クリソタイルなどのアスベスト(石綿)を含有する建材や摩擦材、接着剤の製造などが禁止となりました。主に、これらのアスベスト(石綿)を使用した建築物に係る仕事に携わった人や周囲の一般人の健康被害が問題となり現在ではアスベスト(石綿)の使用を禁止としています。ただ、現在問題となっているのが、アスベスト(石綿)の使用を禁止とする前の建築物のリフォームや解体を行う際に発生するアスベスト(石綿)被害です。その被害を最小限に抑えるためにも、アスベスト(石綿)を扱う事業者には、「石綿作業主任者」を選任しなければなりません。「石綿作業主任者」は、労働安全衛生法に定められた作業主任者(国家資格)のひとつであり、作業現場での、アスベスト(石綿)による健康被害をなくすために、作業の指揮や監督、現場管理を行う責任者のことをいいます。また、健康被害を減らすために、民間建築物に対するアスベスト(石綿)除去や囲い込み、封じ込めに関して国は補助制度を創設しており、補助金制度がある地方公共団体では地方公共団体経由で補助金が支給されるところが多くあります。

■建物を壊すときに注意すること

①建築物や工作物の解体の作業等を行うときは、あらかじめアスベスト(石綿)が使用されているか否かを調査する必要があります。まずは、アスベスト(石綿)等が使用されているかいないかの書面調査と目視調査を行います。それでも不明の際は、分析調査を行うか、アスベスト(石綿)を含有するものとして取り扱うことになります。

②吹付け石綿、石綿含有断熱材・保温材・耐火被覆材が使用されている建築物や工作物の解体の作業などを行うときは、大気汚染防止法に基づき、特定建築材料が使用されている建築物等の解体や改造、補修作業を行う際には、石綿飛散防止対策(作業基準の遵守)が義務づけられています。特定建築材料が使用されている建築物等の解体、改造、補修する際には、作業の種類ごとに遵守しなければならない「作業基準」が定められています。また、吹付け石綿、石綿含有断熱材・保温材・耐火被覆材に係る一連の作業を開始する14日前までに、都道府県等に届出を行い、石綿飛散防止のための作業基準を遵守しなければなりません。なお労働安全衛生法や廃棄物処理法等の遵守も必要です。

解体等工事の元受業者または自主施工者は、アスベスト(石綿)使用の有無について事前調査を行い、調査結果を発注者に対し書面にて説明し、その結果等を標識として解体等工事場所へ見やすいように掲示しなければなりません。標識は解体工事開始の7日前までに設置し、「調査結果」「調査を行った者(元請業者又は自主施工者)の氏名又は名称及び住所」「調査を終了した年月日」「調査方法」「特定工事(届出の対象工事)に該当する場合は特定建築材料の種類」を記載する必要があります。

■特定建築材料に該当する建築材料について

①吹付け石綿

具体例:吹付け石綿、石綿含有ひる石吹付け材、石綿含有パーライト吹付け材、石綿含有吹付けロックウール(乾式・湿式)

②石綿を含有する断熱材

具体例:煙突用断熱材、屋根用板裏断熱材

③石綿を含有する保温材

具体例:石綿保温材、石綿含有パーライト保温材、石綿含有けいそう土保温材、石綿含有けい酸カルシウム保温材、石綿含有水練り保温材

④石綿を含有する耐火被覆材

石綿含有けい酸カルシウム板第2種、石綿含有耐火被覆板

⑤石綿を含有する仕上塗材

石綿含有建築用仕上塗材

⑥石綿含有成形板等

石綿含有セメント管、押出成形品、石綿含有成形板

■アスベスト(石綿)含有建材の定義

①アスベスト(繊維状を呈しているアクチノライト、アモサイト、アンソフィライト、クリソタイル、クロシドライト及びトレモライト)の特性を活かす目的で、製造時にアスベスト(石綿)を使用した建材。

②製造工程等で発生するアスベスト(石綿)含有製品の副産物(端材等)を原材料・副資材として使用した建材で、アスベスト(石綿)含有率が0.1%超であることが判明している建材。

③製造時に、天然鉱物(タルク、セピオライト、バーミキュライト、天然ブルーサイト及び蛇紋岩)を原料として使用し、アスベスト(石綿)含有率が0.1%超であることが判明している建材。

■アスベスト解体にあたって必要な資格

アスベスト(石綿)を含む建築物の解体を行うためには、「石綿取扱い作業従事者の特別教育」、または「石綿作業主任者」の講習を受ける必要があります。

また、アスベスト(石綿)を取り扱う作業を行う場合には、労働安全衛生法と石綿障害予防規則に基づき、事業者は石綿作業主任者を選任する必要があります。

「石綿取扱い作業従事者」は、「石綿取扱い作業従事者の特別教育」の講習を受講することでなることができます。受講資格は18歳以上で、石綿作業主任者の講習を修了している人は石綿取り扱い作業従事者の講習を受けなくてもアスベスト(石綿)を取り扱う仕事を行うことができます。

【石綿取扱い作業従事者の特別教育の講習内容】

・石綿の有害性(0.5時間)

・石綿等の使用状況(1時間)

・石綿等の粉じんの発散を抑制するための措置(1時間)

・保護具の使用方法(1時間)

・その他石綿等のばく露防止に関し必要な事項(1時間)

また、「石綿作業主任者」になるためには、以下の講習を2日間にわたって受け、講習が終わった後の修了試験を受けたら終了となります。受講資格は18歳以上となります。

【石綿作業主任者の講習内容】

・健康障害及びその予防措置に関する知識(2時間)

・作業環境の改善方法に関する知識(4時間)

・保護具に関する知識(2時間)

・関係法令(1時間)

■アスベストが与える健康被害、吸収リスクについて

アスベスト(石綿)は、天然の繊維状の鉱物で、抗張力や耐摩耗性、耐熱性、断熱・保温性、防音性、耐薬品性に優れているものです。また3,000 種以上の用途があるといわれ、比較的安価で量産性があるために、長期間建築などに使用されてきました。主にアスベストセメント製品やアスベストスレート、複合ボード、パルプセメント板として工場、倉庫、駅舎、住宅などの屋根、壁、内外装用に使われてきました。

その中でも多く使用されたアスベスト(石綿)は、蛇紋石族のクリソタイル(白石綿)と角閃石族のアモサイト(茶石綿)・クロシドライト(青石綿)です。そのうち、クリソタイル(白石綿)の消費量が9割以上を占めていると言われています。

現在では、労働安全衛生法施行令によって、アスベスト(石綿)の製造・使用は禁止されています。

最もアスベスト(石綿)に触れる機会が多く、健康に影響が起きる確率が高い人は、アスベスト製品を扱うもしくは製造する工場の作業者です。アスベスト(石綿)の製造や使用が禁止される前は特に、工場で多量のアスベスト(石綿)繊維が空中に浮遊するために、アスベスト(石綿)肺患者が多数発生しました(一次性職業曝露)。次いでアスベスト(石綿)製品を取り扱う作業者(ボイラーやビル鉄骨などへの吹き付け・補修作業、保温・断熱材 取り扱いを行った人達、造船、蒸気機関車の運転手、パッキン・ブレーキ製造、電気配線 などの作業をする人達)の多くも大きな被害を受けたとされています。(二次性職業曝露)。しかし、このように職業上どうしてもアスベスト(石綿)に触れざるを得なかった人たち以外でも被害はあるのです。

(非職業性曝露)。例として、アスベスト(石綿)工場周辺に住む人(近隣曝露)、アスベスト(石綿)粉じんのついた作業服のまま帰宅した作業者の家族(家庭内曝露)などの健康障害が報告されています。

【アスベストによる健康被害例】

  • アスベスト(石綿)肺

潜伏期間は15~20年と言われ、アスベストの粉塵を吸い込むことによって起こる肺組織の広範な瘢痕化です。職業上アスベスト粉塵を10年以上吸入した労働者に起こるといわれている病気です。主な症状例としては、運動能力の低下によって息切れの症状が見られます。次第に呼吸が困難になり、アスベスト(石綿)肺の患者の約15%に、重度の息切れや呼吸不全が起こります。アスベスト(石綿)肺の患者では、一般に肺機能に異常が起きているため、医師が聴診器で肺の音を聞くと、通常は断続性ラ音と呼ばれる異常な音が聞こえると言われています。診断方法としては、アスベスト(石綿)への曝露歴を調べ、胸部の画像検査を行います。症状を楽にするために、酸素吸入や薬剤の投入により心不全の緩和を行います。アスベスト(石綿)肺に対する治療の大半が症状の緩和です。

  • 肺がん

潜伏期間は15~40年と言われており、肺細胞に取り込まれた石綿遷移の主に物理的刺激により肺がんが発生すると言われています。国内の肺がんによる年間死亡者約7万人のうち、2,000~3,000人がアスベスト(石綿)肺がんであると推定されています。主な症状例としては、初期症状として労作時の息切れ、咳、痰が多くみられます。アスベスト(石綿)肺がんと診断するためには、「肺がん発症のリスクが2倍になるアスベスト(石綿)ばく露があること」を確認する必要があります。これは、胸部X線検査またはCT検査による肺の画像所見、あるいは手術や気管支鏡などから得られた肺組織中の特異的な物質を調べることにより確認します。治療としては、通常の肺がんと同様に、組織型やステージに応じて手術、化学療法、放射線療法などが選択されることが多いです。

  • 悪性中皮腫

潜伏期間は20~50年と言われており、肺を取り囲む胸膜、肝臓や胃などの臓器を囲む腹膜、心臓及び、大血管の起始部を覆う心膜などにできる悪性の腫瘍です。中皮腫は、発生する場所によって、悪性胸膜中皮腫、悪性腹膜中皮腫などに分けられます。若い時期にアスベスト(石綿)を吸い込んだ人の方がなりやすいと言われています。悪性胸膜中皮腫の症状としては、胸の痛みや咳、大量の胸水による呼吸困難や胸部圧迫感が起こります。また、原因不明の発熱や体重減少が起こることもありますが、いずれの症状も、悪性胸膜中皮腫のみに特徴的な症状ではないため、早期発見が難しい病気と言われています。悪性腹膜中皮腫の症状の多くの場合は、早期では無症状です。進行すると、腹水が溜まることによる腹部膨満感や腹痛、腰痛、食欲低下、排便の異常、腹部のしこりなどが起こると言われています。

■アスベスト除去工事における補助金制度について

アスベスト(石綿)含有建材の撤去費用は、おおよそ2万~8.5万円/㎡(処理面積)が目安となります。ただし、諸条件によって大幅に撤去費用も変わるので必ず見積もりを取って確認した方がいいです。アスベスト(石綿)含有建材を使った建物の解体作業は、国土交通省によって、発塵性の高さを基準にしてレベル1から3に分けられています。レベル1は著しく発塵性が高く、防火材や外壁の仕上げ塗材など、アスベスト含有吹き付け材が対象となります。レベル2は、発塵性が高く、アスベスト含有断熱材、保温材、耐火被覆材などが対象となります。レベル3は発塵性が低く、アスベスト含有スレートやビニル床タイルなど、主に成形板の建材が対象となります。レベル1や2に該当する解体工事では、着工前に届出が必要となります。作業においては、厳格なアスベスト飛散防止対策と作業労働者のばく露防止対策が求められます。

・補助の対象

建築物の吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウールのアスベスト除去、または囲い込み、封じ込めを行う場合

・対象の建築物

吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウールが施工されている建築物

・対象とする費用

対象建築物の所有者などが行う吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウールの除去、封じ込めまたは囲い込みに要する費用(建築物の解体・除去を行う場合にあってはアスベスト除去に要する費用相当分が補助対象)

・補助率

地方公共団体の補助額を超えない範囲で2/3以内