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アスベスト調査補助金について

アスベストに関する補助金について、地方公共団体ごとに補助金制度を設けているところが多く、各地方公共団体へ確認を行った方が良いです。建築物にアスベストが使用されていると、そこを利用する人が健康障害をおこすおそれがあります。さらに、アスベストの使用が不明のままでは、不動産取引に当たり、通常はアスベストがあるものと評価され、建築物自体の資産価値を下げることになります。アスベスト繊維を吸引することによって、石綿肺(じん肺の一種)、肺がん、悪性中皮腫などの疾患を発症する可能性があることが知られています。アスベスト関連疾患は、アスベストにばく露してから長い年月を経て発症します。そういった健康被害を減らすためにも、国から補助金制度が設けられています。

■アスベスト調査補助金制度について

民間建築物に対する石綿(アスベスト)調査等に関して国(国土交通省)は補助制度(住宅・建築物アスベスト改修事業)を創設しており、補助金制度がある地方公共団体において、活用することができます。補助金制度のある地方公共団体の場合は、調査を依頼する前にまずは地方公共団体の担当部局に相談し、地方公共団体に補助金交付の申請を行うことをおすすめします。交付決定の通知を受け取った後に、調査者と契約の流れが良いです。詳細な手続きの方法や対象要件等については、各地方公共団体の担当部署に確認が必要となります。

・補助金対象建築物

吹付けアスベスト等が施工されているおそれのある住宅・建築物

・補助金対象アスベスト

吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウール

・補助内容

吹付け建材中のアスベストの有無を調べるための調査に要する費用

・国の補助額

限度額は原則として25万円/棟(民間事業者等が実施する場合は地方公共団体を経由)

■アスベスト除去工事における補助金制度について

民間建築物に対する石綿(アスベスト)除去、または囲い込み、封じ込めに関して国(国土交通省)は補助制度(住宅・建築物アスベスト改修事業)を創設しており、補助金制度がある地方公共団体において、活用することができます。

・補助金対象建築物

吹付けアスベスト等が施工されている住宅、建築物

・補助金対象アスベスト

吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウール

・補助費用の内容

対象建築物の所有者等が行う吹付けアスベスト等の除去、封じ込めまたは囲い込みに要する費用(建築物の解体・除去を行う場合にあってはアスベスト除去に要する費用相当分)

・国の補助率

地方公共団体の補助額の1/2以内(かつ全体の1/3以内)

■アスベスト調査の方法について

アスベスト調査にあたっては、まず、建築物を施工した建設業者又は工務店、あるいは分譲住宅等を販売した宅建業者に問い合わせ、設計図書(建築時の施工図・材料表等)で確認します。ただし、アスベストの使用が記載されていない場合や、後に改修工事や補修工事でアスベストが使用された可能性もあり、現地調査と合わせて調査する必要があります。アスベスト含有吹付け材が規制された年代と建築年次、使用されている用途などによりある程度は類推できますが、調査者等アスベスト調査の専門家に依頼することをお勧めします。

大気汚染防止法、石綿障害予防規則に基づくアスベストの使用の有無の「事前調査」を行わせるべき者については、厚生労働省労働基準局長通達(平成26年4月23日基発0423第7号)において、「建築物石綿含有建材調査者、石綿作業主任者技能講習修了者のうち石綿等の除去等の作業の経験を有する者及び日本アスベスト調査診断協会に登録された者」など石綿に関し一定の知見を有し、的確な判断ができる者が調査を行うこととされています。

建築物石綿含有建材調査者(調査者)とは、「建築物石綿含有建材調査者講習登録規程」(平成25年国土交通省告示第748号)に基づき、登録講習機関が実施する講習を修了し「建築物アスベスト含有建材調査者」の公的資格を与えられた中立かつ公正なアスベスト調査の専門家です。調査者等を活用することにより、アスベストの使用の精確な調査を行うことが重要です。

建材中のアスベスト含有率の分析は、下記のJISに規定された分析法により分析することになります。JIS A 1481-1またはJIS A 1481-2でアスベストの含有を判断し、必要に応じJIS A 1481-3で含有量を分析することになります。

・JIS A 1481-1(建材製品中のアスベスト含有率測定方法-第1部:市販バルク材からの試料採取及び定性的判定方法)<偏光顕微鏡法>

・JIS A 1481-2(建材製品中のアスベスト含有率測定方法-第2部:試料採取及びアスベスト含有の有無を判定するための定性分析方法)<位相差・分散顕微鏡による分散染色法とX線回折分析方法の組合わせ>

・JIS A 1481-3(建材製品中のアスベスト含有率測定方法-第3部:アスベスト含有率のX線回折定量分析方法)<X線回折定量分析方法>

■不動産取引時のアスベスト調査の基準について

不動産取引にあたり下記の基準があり、アスベスト調査が必要になります。

  • 不動産鑑定評価(不動産鑑定評価基準)

不動産取引時における土地や建築物等の適正評価にあたり、確認する必要のある鑑定評価事項に「アスベスト等の有害物質」があるため、アスベスト調査が必要になります。

② 投資用不動産の取引や企業買収等での資産評価

デューディリジェンス(投資判断のための調査)において物理的調査報告として建物環境のリスクを評価します。ここで、建物環境リスク評価の項目にアスベスト含有建材の有無を明示する必要があるため、アスベスト調査が必要になります。

  • 建築物の売買等の際の重要事項説明(宅地建物取引業法)

アスベスト調査の結果がある場合には、調査結果の内容を説明する必要があります。

  • 住宅性能表示(住宅の品質確保の促進等に関する法律)

住宅性能表示制度により既存住宅を性能表示する場合、空気環境の項目にアスベスト含有建材の有無を明示する必要があるため、アスベスト調査が必要になります。

■アスベスト調査費用について

アスベストの成分分析の調査費用は、3〜5万円が相場と言われています。アスベストの検査については、解体工事を行う業者ではなく、アスベスト調査専門の機関となります。そのため、解体工事会社がアスベスト調査の専門機関に発注し、解体の見積りに計上されるという形となります。分析方法には2種類あり、定性分析と定量分析があります。定性分析とは、アスベストが含まれているか否か(0.1%を超えて含有しているか分析)を調べる分析です。定量分析は、アスベスト含有が確認された試料で含有率を調査する分析方法です。分析機関や検査項目によっても費用は異なりますが、それぞれ約3~5万円を想定しておくと良いです。

■貸している建築物にアスベスト含有が判明した場合について

建築物の維持管理上で下記の4項目の対応が必要になります。

建築物所有者および管理者は、テナントが決してアスベストにばく露させないことを最優先に建築物の維持管理を行わなければなりません。下記③について大阪の高架下の文具店の事例以降、所有者および管理者の責任はより厳しくなっています。調査者などのアスベストの専門家に調査を依頼し、テナント、メンテナンス業者、一般の人々のアクセスとばく露リスクを考慮した建築物の維持管理を行うことをお勧めします。

  • 資産除去債務の評価(企業会計基準)

不動産評価で、有形固定資産の原状回復のために必要な将来のアスベスト含有建材の処分費用を負債として評価するため、アスベスト調査が必要になります。

  • 定期調査報告(建築基準法)

一定規模以上の特殊建築物などや政令で定められた建築物の定期調査で、吹付けアスベスト等の使用状況、劣化の状況、除去・飛散防止措置の実施状況を調査し、特定行政庁に報告する必要があります。

  • 土地工作物責任(民法717条)による損害賠償請求

建築物の利用者がアスベストのばく露により健康障害を生じた場合の土地工作物責任による損害賠償請求に対し、アスベスト調査をしアスベスト含有建材の存在を確認する必要があります。

  • 石綿障害予防規則による飛散防止対策

2以上のテナントが入ったビルなどの共有スペースにあるアスベスト対策は建築物所有者の義務になります。

■アスベストを使用した建築物の解体、改修、リフォームを行う事業者に必要な資格について

アスベストを使用した建築物の解体、改修、リフォーム等を行う事業者の資格制度はありませんが、事業者は下記の項目を遵守する必要があります。

  • 石綿作業主任者の選任
  • 労働者全員に石綿障害予防規則に定めるアスベストの特別教育を実施

③ 特別管理産業廃棄物管理責任者の任命(吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウール、アスベスト含有保温材等の除去の場合)

  •  労働者全員に半年に1度、アスベストの特殊健康診断を実施

解体や改修工事においては、工事に携わる労働者の健康障害の防止、大気汚染防止の観点からアスベスト繊維が空気中に飛散することを防止する必要があり、原則として湿潤化して手作業で行います。レベル1(もっとも飛散性の高いアスベスト含有吹付け材であり、建築基準法で規制されている吹付けアスベストなどが分類されている)やレベル2(アスベスト含有保温材、断熱材、耐火被覆材が分類される)の飛散性アスベストの除去、または囲い込み、封じ込めを行う作業では、作業場の隔離、負圧徐じん装置の使用等が必要です。また周辺環境への影響を考慮し、アスベスト繊維の空気中濃度を作業前、作業中、作業完了後に測定します。廃棄については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律を遵守し、廃石綿等処理マニュアル、非飛散性石綿廃棄物の取扱いに関する技術指針に従うことが望ましいです。

■アスベスト除去工事費用について

吹き付けアスベスト1㎡当たりの除去単価の目安は、事前調査、仮設、廃棄物処理など、除去工事のすべてにかかわる費用を含み、処理面積300㎡未満のケースで2万~6万円となっています。

【アスベスト除去1㎡当たりの費用の目安】

・処理面積300㎡未満の場合:2万~6万円

・処理面積300㎡~1000㎡の場合:1万5000~4万円

・処理面積1000㎡以上の場合:1万~2万5000円

■アスベストに関する法的規制について

① 建築基準法

建築物の最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図ることを目的として、吹付けアスベスト等の建築物への使用禁止及び増改築、大規模修繕・模様替の際に除去を義務づけています。ただし、増改築、大規模修繕・模様替の際の既存部分は、封じ込め及び囲い込みの措置を許容しています。

  • 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)

特定の建設資材の分別解体や再資源化、解体工事業者の登録制度等により、再生資源の有効利用や廃棄物の適正処理を図ることを目的として、対象建設工事において、分別解体等に係る施工方法に関する基準の一つとして特定建設資材に付着している吹付けアスベスト等の有無に関する調査を行うこと、付着物の除去の措置を講ずること等を規定しています。

③ 労働安全衛生法(石綿障害予防規則を含む)

職場における労働者の安全と健康の確保を目的として、アスベストを重量の0.1%を超えて含有する製剤等の製造、輸入、使用等の禁止、建築物の解体等の作業における労働者へのアスベストばく露防止措置等を規定しています。

④ 大気汚染防止法

事業活動や建築物等の解体等に伴う大気汚染を防止し、国民の健康保護、生活環境の保全、被害者の保護を図ることを目的として、建築物解体等の作業の届出、建築物解体等の作業基準(吹付けアスベスト、アスベストを含有する保温材等の除去等)を規定しています。

⑤ 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)

廃棄物の排出抑制、適正処理等により、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的として、廃石綿等を含む廃棄物の特別な管理等を規定しています。

⑥ 宅地建物取引業法

建物について、アスベスト使用の有無の調査結果が記録されている時は、その内容を重要事項説明として建物の購入者等に対して説明することを規定しています。

⑦ 住宅の品質確保の促進等に関する法律

住宅性能表示制度において、既存住宅における個別性能に係る表示事項として、「アスベスト含有建材の有無等」などを規定しています。