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アスベスト関係法令について

■アスベスト(石綿)について

アスベストとは、6種類の天然にできた鉱物繊維で、「石綿」(せきめん、いしわた)とも呼ばれています。アスベストはとても細かい繊維状のため、とても軽く飛散しやすい性質を持っています。これらのアスベストを吸い込むと、平均20年~40年の月日を経て、肺がんや悪性中皮腫を引き起こすことが分かっています。以前はビル等の建築工事において、保温断熱の目的で石綿を吹き付ける作業が行われていましたが、昭和50年に原則禁止されました。その後も、スレート材、ブレーキライニングやブレーキパッド、防音材、断熱材、保温材などで使用されましたが、現在では、原則として製造等が禁止されています。アスベストによる健康被害により、労働安全衛生法や大気汚染防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律などで予防や飛散防止等が図られています。

■アスベストに関係する法令の種類

・大気汚染防止法

・労働安全衛生法

・石綿障害予防規則

・廃棄物の処理及び清掃に関する法律

・建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律

・環境確保条例

■大気汚染防止法について

「大気汚染防止法」に基づき、特定建築材料が使用されている建築物等の解体、改造、補修作業を行う際には、石綿飛散防止対策(作業基準の遵守)が義務づけられています。また、吹付け石綿、石綿含有断熱材・保温材・耐火被覆材に係る作業については事前に都道府県等に届出を行う必要があります。

【特定建築材料に核当する建築材料の例】

・吹付け石綿     

吹付け石綿、石綿含有吹付けロックウール(乾式・湿式)、石綿含有ひる石吹付け材、石綿含有パーライト吹付け材

・石綿を含有する断熱材  

屋根用折板裏断熱材、煙突用断熱材

・石綿を含有する保温材

石綿保温材、石綿含有けいそう土保温材、石綿含有パーライト保温材、石綿含有けい酸カルシウム保温材、 石綿含有水練り保温材

・石綿を含有する耐火被覆材

石綿含有耐火被覆板、石綿含有けい酸カルシウム板第2種

・石綿を含有する仕上塗材            

石綿含有建築用仕上塗材

・石綿含有成形板等         

石綿含有成形板、石綿含有セメント管、押出成形品

■労働安全衛生法について

労働安全衛生法とは、労働者の安全を確保し、労働環境の衛生状態を良好に保つことを目的とした法律です。石綿は繊維状で非常に細かく、飛散しやすい性質をもっています。また、飛散しても気づきにくい上に、悪性中皮腫や肺がんを起こす発ガン性があります。最初の石綿吸入から約40年前後の潜伏期をへて、石綿肺、石綿肺癌、悪性中皮腫、といった健康障害がおきる事が分かっています。主にこの健康被害を受けるのは、アスベストを使用する建設現場や建築物のある場所で働く労働者になります。そこで、労働者の健康被害を最小限に減らすことを目的に労働安全衛生法が定められました。

・第55条でアスベストの製造・使用禁止を規定

黄りんマツチ、ベンジジン、ベンジジンを含有する製剤その他の労働者に重度の健康障害を生ずる物で、政令で定めるものは、製造し、輸入し、譲渡し、提供し、又は使用してはならない。ただし、試験研究のため製造し、輸入し、又は使用する場合で、政令で定める要件に該当するときは、この限りでない。

・第88条でアスベスト除去工事の計画書作成を規定

事業者は、建設業その他政令で定める業種に属する事業の仕事(建設業に属する事業にあっては、前項の厚生労働省令で定める仕事を除く。)で、厚生労働省令で定めるものを開始しようとするときは、その計画を当該仕事の開始の日の十四日前までに、厚生労働省令で定めるところにより、労働基準監督署長に届け出なければならない。

■石綿障害予防規則について

石綿障害予防規則は、石綿の安全な取扱と障害予防についての基準を定めた厚生労働省令であり、労働安全衛生法に基づき定められたものになります。建築物などの解体工事に係る主な対策について石綿規則にて細かく定められています。

  • 事前調査(石綿規則第三条関係)

事業者は、次に掲げる作業を行うときは、石綿等による労働者の健康障害を防止するため、あらかじめ、当該建築物、工作物又は船舶(鋼製の船舶に限る。以下同じ。)について、石綿等の使用の有無を目視、設計図書等により調査し、その結果を記録しておかなければならない。

一 建築物、工作物又は船舶の解体、破砕等の作業(石綿等の除去の作業を含む。以下「解体等の作業」という。)

二 第十条第一項の規定による石綿等の封じ込め又は囲い込みの作業

2 事業者は、前項の調査を行ったにもかかわらず、当該建築物、工作物又は船舶について石綿等の使用の有無が明らかとならなかったときは、石綿等の使用の有無を分析により調査し、その結果を記録しておかなければならない。ただし、当該建築物、工作物又は船舶について石綿等が吹き付けられていないことが明らかである場合において、事業者が、当該建築物、工作物又は船舶について石綿等が使用されているものとみなして労働安全衛生法 (以下「法」という。)及びこれに基づく命令に規定する措置を講ずるときは、この限りでない。

3 事業者は、第一項各号に掲げる作業を行う作業場には、次の事項を、作業に従事する労働者が見やすい箇所に掲示しなければならない。

一 第一項の調査(前項の調査を行った場合にあっては、前二項の調査。次号において同じ。)を終了した年月日

二 第一項の調査の方法及び結果の概要

  • 作業計画(石綿規則第四条関係)

事業者は、次に掲げる作業を行うときは、石綿等による労働者の健康障害を防止するため、あらかじめ、作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない。

一 石綿等が使用されている建築物、工作物又は船舶の解体等の作業

二 第十条第一項の規定による石綿等の封じ込め又は囲い込みの作業

2 前項の作業計画は、次の事項が示されているものでなければならない。

一 作業の方法及び順序

二 石綿等の粉じんの発散を防止し、又は抑制する方法

三 作業を行う労働者への石綿等の粉じんのばく露を防止する方法

3 事業者は、第一項の作業計画を定めたときは、前項各号の事項について関係労働者に周知させなければならない。

  • 届出(石綿規則第五条関係)

事業者は、次に掲げる作業を行うときは、あらかじめ、様式第一号による届書に当該作業に係る建築物、工作物又は船舶の概要を示す図面を添えて、当該事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長(以下「所轄労働基準監督署長」という。)に提出しなければならない。

一 壁、柱、天井等に石綿等が使用されている保温材、耐火被覆材(耐火性能を有する被覆材をいう。)等(以下単に「保温材、耐火被覆材等」という。)が張り付けられた建築物、工作物又は船舶の解体等の作業(石綿等の粉じんを著しく発散するおそれがあるものに限る。)を行う場合における当該保温材、耐火被覆材等を除去する作業

二 第十条第一項の規定による石綿等の封じ込め又は囲い込みの作業(保温材、耐火被覆材等の封じ込め又は囲い込みの作業にあっては、石綿等の粉じんを著しく発散するおそれがあるものに限る。以下次条第一項第三号において同じ。)

三 前二号に掲げる作業に類する作業

2 前項の規定は、法第八十八条第三項の規定による届出をする場合にあっては、適用しない。

■廃棄物の処理及び清掃に関する法律

廃棄物の処理及び清掃に関する法律は、廃棄物の排出を抑制し、適正な処理(分別、保管、収集、運搬、再生、処分など)方法を定め、生活環境の清潔を保持することによって、生活環境の保全と公衆衛生の向上を図ることを目的としています。

石綿は、健康被害が指摘されている物質であり、建築物に耐火被覆材として壁面等に吹き付けて使用されているほか、壁、天井、床、空調設備等に断熱材又は軽量建材などとしても使用されています。今後、建築物の老朽化による解体、リフォームなどの工事の増加にともない、石綿を含有する廃棄物が多量に排出されることが予想されます。飛散性アスベスト廃棄物は、廃石綿等として「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」により特別管理産業廃棄物として従来から厳しく規制されています。

・飛散性アスベスト廃棄物の処理方法

飛散性アスベストについては、特別管理産業廃棄物に該当し、処理方法は廃棄物処理法で定められ、都の指導指針や国のマニュアルに基づき次の方法があります。

①溶融処理又は無害化処理をして特別管理産業廃棄物としての性状を失わせ、普通の産業廃棄物(鉱さい)とする方法。

②コンクリート固型化や薬剤による安定化をした後、耐水性の材料で2重梱包し、管理型処分場に埋立処分する方法。

ただし、非飛散性アスベスト廃棄物でも建築物の解体工事等から発生する場合は、撤去や保管、運搬中に石綿が飛散しやすいため、東京都の指導指針や国のマニュアルに基づき取り扱います。ここでは、手作業による撤去、散水、分別保管、袋詰め、シート掛け等の措置が必要になります。また、撤去後は最終処分場または、溶融施設等に直接運搬し、破砕処理等の中間処理は原則禁止となります。

■建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律

建設リサイクル法では、特定建設資材(コンクリート(プレキャスト板等を含む。)、アスファルト・コンクリート、木材)を用いた建築物等に係る解体工事又はその施工に特定建設資材を使用する新築工事等であって一定規模以上の建設工事(対象建設工事)について、その受注者等に対し、分別解体等及び再資源化等を行うことを義務付けています。

施行規則第2条第1項第1号では、分別解体等に係る施工方法に関する基準として、 事前調査に関し 「吹付け石綿その他の対象建築物等に用いられた特定建設資材に付着したものの有無の調査その他対象建築物等に関する調査を行うこと 」と規定されています。対象建設工事の実施に当たっては、工事着手の7日前までに発注者から都道府県知事に対して分別解体等の計画等を届け出ることを義務付けたほか、対象建設工事の請負契約の締結に当たっては、解体工事に要する費用や再資源化等に要する費用を明記することを義務付けるなどの手続関係も整備されています。

■環境確保条例

環境確保条例(正式名称:都民の健康と安全を確保する環境に関する条例)は、都民が健康で安全かつ快適な生活を営む上で必要な環境を確保するための条例です。第123条第2項に規定する知事が定める作業上の遵守事項は、大気汚染防止法(昭和43年法律第97号。以下「法」という。)第18条の15及び第18条の20の規定によるほか、次のとおりとされています。

  • 吹付け石綿又は石綿を含有する断熱材等(断熱材、保温材又は耐火被覆材をいう。以下同じ。)を使用する建築物その他の施設の解体又は改修の工事を施工する者の遵守事項 1. 防じんシートその他の資材を使用して、工事現場に覆いをすること。

2.粉じんの飛散を防止するため、散水その他の方法により、工事現場を湿潤化すること。 3.石綿を湿潤化するために行う散水その他の措置により石綿を含む水を排出するときは、ろ過処理その他の適切な処置を講じること。

4.吹付け石綿又は石綿を含有する断熱材等の除去作業に使用した工具及び資材等は、付着した石綿を取り除いた後、当該除去作業を行う場所(以下「作業場」という。)の外へ搬出すること。

5.作業場と周辺との隔離に使用したプラスチックシート等は、真空掃除機等で清掃した後、飛散防止剤を散布し、作業場内の空気の除じんを十分行った後に取り外すこと。

6.条例第124条第1項の規定による届出に必要な情報を法第18条の15第1項の規定による説明のときに発注者に提供すること。

7.1から6までの規定による措置、条例第123条第2項の規定による監視の結果に基づく措置、法第18条の14の作業基準に係る措置その他吹付け石綿又は石綿を含有する断熱材等の除去等に係る措置を行ったときは、実施年月日、実施方法、異常の有無及び異常があった場合の措置内容並びに現場責任者の氏名を記録し、これを3年間保存すること。

② 石綿含有材料を使用する建築物その他の施設の解体又は改修の工事を施工する者のうち、第1に該当する者以外の者の遵守事項

  1. 工事現場及びその周辺に、石綿を含有するくずが残存しないよう後片付け及び清掃を行うこと。
  2. ①1、2及び4に規定する措置と同等の措置を講ずること。